ブラックチェンバー

ブラックチェンバー

ブラックチェンバー

昨日は仙台で小池昌代先生の講座を受けましたが、今日は山形市に移動して、大沢在昌先生を講師にお迎えした「小説家になろう講座」を受けてまいりました。


ゲストとして書評家の西上心太先生、大沢オフィスのマネージャーさん、新潮社の担当編集者さんお二人もいらっしゃるという、超豪華な講師陣です。


さて、今回の講座テーマは「小説家のサバイバル術」。


昨年まで日本推理作家協会の理事長も務められ(ちなみに今の理事長は東野圭吾)、また宮部みゆき京極夏彦も所属する事務所を率いるビジネスリーダーとして、第一線で活躍されている大沢先生だけに、商業面でも常に先を見ています。


昨日の小池昌代先生も電子書籍に言及されていましたが、大沢先生もそこは強く意識されていました。


あと五年もすれば、書店や印刷所など紙媒体の業界は今の三分の一の規模にまで縮小するだろう、という大沢先生の予測はかなりショッキングでしたが、それでも作家や編集者は必要である、とのこと。


そのころには紙と電子書籍は一対一の市場規模になっているだろう、と大沢先生は予測されています。そうなると、出版社を通さずにKindleなどでコンテンツを直売する作家が増えると予測している人もいますが、大沢先生はそうは考えないとのこと。


現状の書店でも、数千から数万点ある本の中から、読者に一冊を選ばせるのには、作家の力量のみならず、宣伝や営業の力が必要です。まして、電子書籍の時代になれば「絶版」ということが事実上なくなるので、数百万はあるであろう膨大なコンテンツの中から自作を選ばせるのは、作家個人ではとても無理でしょう。


となると、今後は書評家や評論家の存在が、さらに重要さを増すことになります。


電子出版による表現形式の変化も大沢先生は意識されていますが(字の拡大などできれば高齢者でも読みやすくなる、人物の設定などワンクリックで読めるようにすれば話が複雑でも理解しやすい、など)そういう業界の変化まで考えて書かれているとは、さすがにエンタメの最前線作家だと思わされました。


ただ、現状で電子書籍を扱っているのはIT業界の人ばかりで、小説のことを全然わかっていない。逆に、小説や評論の人はITのことがよくわかっていないので、その辺の橋渡しをできる人が出てきてほしい、ともおっしゃっていました。


「理系と文系」の話ははてなでも定期的に話題になりますが、大物作家もそういう齟齬を感じながら仕事をされているんですねぇ。