十代の衝動

というわけで『クローズZERO2』を観てきたッス。

クローズZERO II オリジナルサウンドトラック

クローズZERO II オリジナルサウンドトラック


http://www.cz2.jp/


前作のときもそうでしたが、原作では、エピソードごとのクライマックスはたいていタイマン勝負になるのに対し、映画ではモブでの大乱闘になる、というあたりは映画と漫画というメディアが持つ性質の違いからくるんでしょうか。漫画でモブだと盛り上がらないし、今回は鳳仙スキンヘッド軍団が相手なので、余計に誰が誰だかわからなくなりますからねぇ。


それにしても、今回はいろいろやり過ぎ感がありました。


※以下ネタバレ含む
























原作漫画『クローズ』では、鈴蘭高校と鳳仙学園はかつて全面戦争になり(第一次抗争)ここで美藤真喜雄が鈴蘭の川西にナイフで刺殺され、事態を収拾するため、鈴蘭の桂木源次郎と鳳仙の幹部が休戦協定を結びます。


その後、数年にわたってお互いに手出しはしないという協定が守られますが、真喜雄の弟である美藤竜也が二年生になるとこの協定は破棄され、坊屋春道ら鈴蘭高校との激しい戦いが繰り広げられます(第二次抗争)。


そして、第二次抗争から三年後、キングジョーこと金山丈がトップに君臨する鳳仙学園はふたたび鈴蘭高校に攻撃を仕掛け、天狗の森での五対五マッチで決着をつけます(第三次抗争)。

クローズ&WORST /FBG/金山 丈

クローズ&WORST /FBG/金山 丈



今回の映画『クローズZERO2』は、時系列では第一次と第二次抗争の間に位置するので、原作との整合性を考えるとあまり大規模な抗争にはできないはずですが、そこんところはあえて無視するのが三池崇史監督の方針だったのか、原作のどの抗争をも上回るほど大規模な全面戦争に発展していました。



これまでにも、スネイク・ヘッズ対P.A.D.など、高校生の喧嘩という枠を超えた抗争はありましたが、今回のはすごいです。敵対している学校の体育館に放火して全焼させるというのは、生徒どうしの殴り合いでケリをつけられる事態ではないと思います。それに、鳳仙の校内に鈴蘭の生徒100人が殴りこんできて、校舎をフルに活用した大激闘を繰り広げるというのは、一般生徒を避難させて集団下校させるレベルだと思うのですが、この映画の高校にはヤンキー以外の生徒が一人もいないうえ、教師というものが存在しないので、心配はいりません。


原作には、名前だけ出てくるのも含めれば16校ぐらいの高校が出てきますが、基本的にすべて男子高という、共学化がはやりの昨今では考えられないような教育事情の世界なのでありました。



それにしても、『ドロップ』に『ROOKIES』に『クローズZERO2』と、ヤンキー漫画をイケメン俳優主演で映画化するのが続いてますね。『クローズ』なんて、原作にイケメンなんか一人も出てこない(とくに、連載前半の黒焚連合篇におけるブサイク濃度の高さは異常であった)のに、三浦春馬とか出してるんだもんなぁ。他の人物がみんな濃い目の顔とメイクをしていて(山田孝之はサザンロックみたいなヒゲと長髪、上地雄輔はドレッドヘア、小栗旬はけったいな髪型とぶっきらぼうな演技で迫力を出している)、年齢も高めなのに対し、春馬くんは金髪に染めているだけで演技の線も細く、この世界ではかなりひ弱に見えるのが残念なところでした。美藤竜也は原作では屈指の強豪で、この映画の時点ですでに武装戦線の九能龍信を倒しているはずなのに、三浦春馬じゃ全然そうは見えないんだよなぁ。出番も少ないし、原作を読んでない観客には、なんのために出てきたのかわからないキャラだったんじゃないでしょうか。


まぁ、「なんのために出てきたかわからない」キャラといえば、黒木メイサは今回もまったく意味のないキャラクターでしたけどね。ライブ場面も、全体にロックテイストで貫かれているこの映画の中で、唯一のR&Bということもあってものすごく浮いてました。


『クローズ』シリーズは、不良の音楽がロックだった時代の感性で作られてるんですよね。


原作でも、鈴蘭高校の校舎の壁などに「The Street Beats」と落書きしてあったりしますが、今の高校生はストリートビーツなんて知らないよ!

さすらいの歌

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