Hero Reborn

月刊 少年マガジン 2010年 11月号 [雑誌]

月刊 少年マガジン 2010年 11月号 [雑誌]

川原正敏の『修羅の門』が13年ぶりに再開されたので、月刊少年マガジンを読んでみたんです。


サブタイトルは『第弐門』となっていますが、これまでの扱いでは

となっているので、今度のは第五部のはず。また、陸奥圓明流の「奥義の上に存在する」幻の技「四門」も、これまでに「朱雀」「玄武」の二つまでが登場しているので、次に開くとしたら第三の門になるわけです。いずれにしても、「第弐門」という扱いには違和感があるかなぁ。


中断前の話では、陸奥九十九は父のケンシン・マエダ(素手で戦う傭兵。範馬勇次郎やB・Bの仲間)と闘うためにアマゾンの奥地に向かったところで終わっていました。で、今回の再開第一話は、それからおよそ三年後の話ということになっています。作中の時代設定が西暦何年になっているのか不明ですが、まぁ長期連載にはよくあることです。


陸奥は父との闘いで頭にダメージを負って記憶の一部を失い(よって勝敗不明)、祖父のもとでリハビリをしていて、表舞台から姿を消していたことになっています。ヒロインの舞子も、マスコミもその消息を知らなかったのですが、あれだけの有名人(全国にテレビ中継されている試合で相手を故意に殺害し、渡米してボクシング世界ヘビー級チャンピオンになり、タイトルを返上してブラジルに渡り、またテレビ生中継の試合で相手を故意に殺害している)を忘れるほど日本の世間は好奇心が薄くないと思うんですけどね。


んで、総合格闘技のビッグイベントに陸奥圓明流に似た技を使う覆面武道家が現われ、舞子たちはこれが陸奥ではないか、いやどこか違うなどと気を揉みます。そして、飛田の弟子である宮本とその覆面武道家が対戦するのですが、なぜか宮本も覆面で花道に登場。マスクを脱ぐと、なんとこちらが陸奥であった……ところで以下次号。


話を整理すると、

  • 中断から数年程度の時間が経過
  • 前段の主人公によく似た人物(または明確な偽者)が登場し、世間を騒がせる
  • 主人公をよく知る人物たちが「あれは偽者」と喝破する
  • そこに本物の主人公が登場

という、再開された漫画に本当によくあるパターンに落とし込めます。

TRIGUN MAXIMUM Nー1 (ヤングキングコミックスNEO)

TRIGUN MAXIMUM Nー1 (ヤングキングコミックスNEO)


最近では『ワンピース』も同様にして再開されたようですが、まぁよくあるパターンですからねぇ。


再開された『修羅の門』の世界では、総合格闘技がイベントとしても競技としても確立されているようです。この辺は現実の世界の動きを反映したもので、今後は「競技として確立されたMMAと陸奥圓明流の闘い」がテーマになっていくのでしょう。となるとおそらく、ライバルはジョルジュ・サンピエールあたりをモデルにした人で、悪役としてダナ・ホワイトによく似た人が出てくるんではないかと予想してみます。


とはいっても、「高速で足を交差させた衝撃波で相手の頚動脈を切る」ような技を使う人と、GSPがどうやって闘うのか、その試合にリアリティをどう持たせるのか想像もつきませんけど。


リアリティという点では、この世界における格闘技の受容のされ方にも問題があると思いますけどね。

第二部では、神武館の主宰により日本武道館で「全日本異種格闘技選手権」が開かれ、これに優勝した陸奥九十九は一躍スターとなるわけです。


しかし、このトーナメントは、

  • グローブやファウルカップなど安全対策はいっさい無し
  • マウスピースも誰ひとり使用していない
  • 試合場は、マットとは名ばかりの固い床の上
  • 体重無差別、禁じ手いっさい無し
  • リングドクターによるチェックも無し

という超過激・超危険なルールで行われました。その結果として、重傷を負う選手が続出しています。

  • 竹海直人:左腕および鎖骨骨折、みぞおちに指による刺傷
  • 羽山悟:左拳骨折、両わき腹に指による刺傷、左ひじ骨折、右足骨折、脳震盪
  • 飛田高明:肋骨骨折、左ひじ骨折、頚部裂傷(頚動脈損傷により大出血)
  • 秋山虎二郎:菩薩掌による脳挫傷
  • 片山右京:肋骨骨折
  • 龍造寺徹心:左目失明
  • 陸奥九十九:肋骨五本骨折、脳震盪
  • 不破北斗:肋骨骨折、頚椎骨折(死亡)

ほとんどの選手が血みどろとなり、最終的には殺人を全国にテレビ生中継する事態に発展しました。これほどの惨事が批判されないほど、日本の世間は甘くないと思うんですけどね。


リングの上のことですから選手は罪に問われないにせよ、少なくとも、主催者である神武館の龍造寺館長は、その管理責任を厳しく追及されることになるでしょう。総合格闘技は野蛮で危険な暴力だとして批判され、社会問題になること必至です。日本ユニセフ協会あたりが「なくそう! 殺人格闘技」キャンペーンを張りそうですね。試合を放送したプロデューサーも、局内でなんらかの処分を受けるであろうことは容易に想像できます。少なくとも、現実の日本と同じようにMMAをテレビ放送するのはとうてい不可能となるでしょう。


ま、格闘漫画にこういうことを言うのは、プロレスに「八百長」と言うのと同じぐらいの野暮ってものですけどね。そんなこと言ったら、『範馬刃牙』なんて米大統領誘拐犯として刑務所に入ってたのに、何事もなかったように高校に復学してますからねぇ。



というわけで、今後の展開について他パターンを予想してみます。

  • 陸奥が現われたものの、対戦相手がマスクを脱ぐとなんとそっちも同じ顔。他にも何人ものそっくりさんが現われ、どれが本物かトーナメントで決める
  • いきなり負けて陸奥圓明流の千年にわたる不敗神話が崩壊。と思ったら実はこの試合はブックの決まったプロレスであった。以後はプロレスラーとして、ストーリーが決められている中で真の勝者となるべく闘い続ける
  • MMAの王者をあっさり葬り、今度はアマレスでオリンピックに出たり大相撲で横綱になったりする
  • 掲載誌をヤンマガに移し、舞子とのセックスを描いた特別篇を連載してファンの度肝を抜く