プカプカ 〜由美香のぶるうす〜
さて、酒田くんだりまで何しに行ってたのかというと、酒田港座という映画館で開催された『劇場版テレクラキャノンボール2013』『監督失格』『劇場版BiSキャノンボール2014』の三本立て上映会&カンパニー松尾監督トークショー、という超豪華な(と思わない人は、今日のエントリは関係ないので読まなくていいです)イベントのためであったのです。
自宅を午前10時半ごろに出て、東北自動車道→山形自動車道→月山道路→山形自動車道→日本海東北自動車道と乗り継ぎ(路線名が変わるだけで一本道)2時間半ほどで到着。酒田は8年前に通ったことがあるだけで、ちゃんと来たことがなかったのですが、古い港町の情緒が残る、とても味わい深い町でありました。
で、劇場近くのホテルにチェックインして車を置き、しばし街を散策してから、15時半の開始に合わせて劇場へ行ってみると、すでにカンパニー松尾監督が入り口近辺でスタッフと話しており、入場する観客に「いらっしゃい」とあいさつしていたので、こちらも「どうも」と会釈をしてから入場。
酒田港座は、60年ほど前に建てられた古い映画館で、2002年に閉鎖されたものの『おくりびと』のロケで使われたのをきっかけにして2009年に再オープン。今ではこういったイベント上映も行われているわけですが、料亭などが立ち並ぶ周辺の様子も含めて、非常に味わいのあるロケーションでありました。
まず一本目は『テレクラキャノンボール』。
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公道レースと仙台ナンパの部分は丸ごとカットされ、札幌に着いてからの話だけに絞られているし、ハメ撮りの部分も要点だけをピックアップしているので、悪ノリがより強調されている感じがしましたね。まぁ、この作品に関してはすでにあちこちで語り尽くされているので、多くを語るまでもないでしょう。
終演後には松尾監督のトークもあり、人気が出たことがまだいまいち納得できていない様子がうかがえました。
物販もあり、DVD&ブルーレイのセット商品を買い、松尾監督のサインをいただいたのでありました。
カンパニー松尾監督のサインをいただきました。 pic.twitter.com/4cnmHZRMaY
— ワッシュ (@washburn1975) 2015, 4月 18
で、二本目は『監督失格』。
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AV監督/映画監督の平野勝之が、1996年に、当時不倫関係にあった林由美香と東京〜礼文島まで41日間かけて自転車で旅をしながら『由美香』を撮影したときの様子と、彼女と別れてからの苦闘、良い関係を再建してもういちど撮影しようとした矢先、2005年の由美香の死(自宅で倒れて亡くなっていた由美香を、平野と由美香の母親が発見する様子も収録されている)と葬儀、ショックで撮れなくなった平野が由美香の母や庵野秀明の助けもあって復活するまでを描いている、2010年のこの作品。『テレクラキャノンボール』のアッパーな楽しさとは打って変わって、ホントつらい映画でしたわ。
これはごく個人的な話になりますけど、由美香さんのしゃべり方が、ぼくの知人とそっくりなんですよ。由美香さんとほぼ同世代の人なんですけど、年代が同じだと口調も似てるんですかね。なので、知らない人の話とは思えない感じになってくるんですよね。例えるならば、自分の姉が酔っ払って男性に絡んでいる姿を見せられる感じといいますか(実際にはオレに姉や妹はいないケド)。ホントつらい映画でしたわ。
んでね、96年に北海道へ行く前に、由美香さんのママ(ラーメン店「野方ホープ」社長)にあいさつしに行くのね。そのときは、家に茶色いポメラニアンがいて、来訪者に向かってキャンキャン吠えるのね。
そして、2005年に由美香さんがマンションで亡くなっているのを発見したときは、泣き崩れる由美香ママに、由美香さんが飼っていた真っ白いペキニーズが飛びついてきて、激しくしっぽを振りながらママに絡みついてくるんですよ。犬好きとしては、この姿がまた悲しいんだ。ホントつらい映画でしたわ。
- 『監督失格』WEB限定版 予告編
(↑この映像の冒頭に出てくる犬です)
そんでもって、2010年にママの話を聞きにいったときは、由美香さんを祀った仏壇がある部屋に、由美香さんのペキニーズがいてママと遊んでるんですよね。この無邪気な姿がまたね、喪失の悲しさを強調してくれるんですよ。ホントつらい映画でしたわ。
「監督失格」という言葉は、かつて北海道へ撮影旅行に行ったとき、2人が些細なことからケンカする場面でカメラを回せなかった平野さんに対して、由美香さんが「監督失格だね」と発言したのがもとになっています。そして、由美香さんが死んでいるのを発見した平野さんが、やはり由美香さんの姿を撮れなかった(そりゃそうだ、撮ったって使えるわけがない)ことについて「由美香に『監督失格だね』と言われてる気がする」というところからきています。
由美香さんが亡くなったときには、平野さんの盟友であり、由美香さんのかつての恋人の一人でもあるカンパニー松尾監督もかけつけてくるんですけど、やはり何の撮影もできなくて、泣きじゃくるばかりでした。松尾さんはV&Rにいたとき『ジャンクV 死のカタログ』でブラジルに行って殺人現場の死体とかも撮影してる人なんですけど、やはりかつての恋人の遺体をそんなふうに撮れるはずはないですよね。
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しかもね、オレは初めてこの映画を観るんですけど、同じ小屋で松尾さんもいっしょに観てるわけですよ。何だこの状況。どうリアクションすればいいのか本気でわかんないですよ。
久々に見た『監督失格』。由美香、由美香ママと久しぶりに会った。これをまとめた平野さんの苦悩を思うとやはり泣ける。そして生きてる自分を噛みしめる。
— カンパニー松尾 (@company_matsuo) 2015, 4月 18
『監督失格』が公開されてから5年が経ち、由美香さんの愛犬ガンモと、由美香ママもすでに亡くなりました。『ジャンクV』でナレーションを担当した郷里大輔さんも、もうこの世の人ではありません。時の流れというのは残酷なものです。
『監督失格』で印象的な場面はもうひとつあって、由美香さんが仲間たちと楽しく撮っているスナップ写真のあちこちになぜか写っている庵野秀明の姿、ではなくて、由美香さんの葬儀で、出棺の時に由美香さんの棺をかついだのが、平野さんや松尾さんも含めた、彼女を愛した男たちだった、というところですね。
この作品が上映される前に、劇場では西岡恭蔵の“プカプカ”(つじあやのによるカヴァー版)が流されていたんですよ。
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(これは、オリジナルシンガーの西岡恭蔵によるバージョン)
“プカプカ”は安田南をモデルにした歌だといわれていますが、作中でずっと煙草をプカプカ吸っている由美香さん、夕日を見ながら素朴な童謡を歌う由美香さん、そして、寝た男たちが夜の明けるまで酒を飲めるであろう由美香さんのイメージにぴったり過ぎて、今後オレは、この曲を聴くたびに林由美香の姿を思い出すことになりそうなのでありました。
というわけで、3本目の『BiSキャノンボール』に突入するわけですが、長くなったので明日に回します。
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