ライク・ア・ヴァージン

この一ヶ月ぐらいですか、『かんなぎ』という漫画が話題をさらっているのは。

月刊 Comic REX (コミックレックス) 2008年 12月号 [雑誌]

月刊 Comic REX (コミックレックス) 2008年 12月号 [雑誌]

この号に載ったエピソードで、ヒロインのナギに古い恋人がいたことが発覚し、「ナギ様が中古の非処女だったなんて!」と激怒したファンが、単行本をビリビリに破いてその写真をネットにうpしたり(これは、エロゲ『下級生2』以来のオタクの定番ギャグである)、超キモい抗議文を作者に送ったり(と称したり)というヘンなお祭りが発生しました。


んで、タイミングがいいというのかなんというのか、作者の体調不良によって今月号には休載、復帰は未定という発表が出されまして、zakzakでも取り上げられるニュースになっちゃったんですね。

http://www.zakzak.co.jp/gei/200812/g2008120907_all.html

芸能:ZAKZAK - 美少女キャラの“非処女発覚”にファン暴走! 人気漫画「かんなぎ」無期限休載

アニメファンに人気の美少女キャラクターが処女ではなかったことに怒ったファンが原作漫画の女性作者に抗議し、漫画の連載が無期限休止に追い込まれた可能性が高いことが分かった。今回の“非処女発覚”には多くのファンが衝撃を受けているが、中には「実力行使」で抗議する者もおり、ネットなどで騒ぎになっている。

オタクの漫画文化に詳しい、フリーライターの篠本634(ムサシ)氏は「体調不良とはいえ、無期限休載は異常事態。今回の非処女騒動が引き金になったのは間違いない」とみる。

 「『かんなぎ』は“萌え”要素と、キャラの神秘性=処女性のバランスが完璧だっただけに、裏切られた感が強い。たとえていえば、『ドラえもん』のしずかちゃんや『タッチ』の南ちゃんが、実は主人公でもない別の彼氏とヤっていたようなもの。一部のファンはその悔しさをどこかにぶつけないと気が済まなかったのだろう」(篠本氏)


くだらねえ(笑)


話題になり始めたころ、ぼくも「Comic REX」先月号を読んでみましたが、別にそんな大騒ぎするような内容とは思えませんでしたけどね。ていうかそこからストーリーが展開していくところだったのに、ここで潰してどうすんねん、と。


ブコメってのは、そうやって「この二人どうなるの」というドキドキ感を楽しむもんじゃなかったんですか。今どきの萌えオタの子たちってのは、ストーリーが動かないでずっと同じところをグルグル回ってる方がいいんですかね。どんだけ打たれ弱いねん、と。


まぁそういうおっさんのぼやきはともかく。


zakzakの記事中では、篠本とかいう人が『タッチ』になぞらえてますけど、『かんなぎ』という作品とナギの設定からいえば、むしろ『うる星やつら』に近いと思うけどなぁ。

うる星やつら〔新装版〕 34 (34) (少年サンデーコミックス)

うる星やつら〔新装版〕 34 (34) (少年サンデーコミックス)

浅倉南は主人公の幼なじみとしてずっと付き合いのあった人物ですが、ナギはいきなり現れて主人公と同居するヘンな喋り方をする非人間なわけで、南ちゃんよりラムちゃんとの共通点の方が多いですね。


ラムちゃんは、あたると知り合う前にはレイと婚約していたわけですから、もし今だったらラムちゃんが中古だったなんて!」っつってファンが怒るんだろか。

1/6 ドール うる星やつら ラム

1/6 ドール うる星やつら ラム

昔の萌えオタはおおらかだったんだなぁ。



と思ったら。


同じ高橋留美子の『めぞん一刻』を考えてみますと。

めぞん一刻 1 (ビッグコミックス)

めぞん一刻 1 (ビッグコミックス)

今でこそ、響子さんが未亡人であるという設定はみんな知ってますが、その事実が明かされるのは第七話なので、リアルタイムで読んでた人は半年以上それを知らずにいた*1んですよね。


ちょっと前に出ていた、雑誌サイズの総集編には当時のファンからの声も収録されていたんですが、「ショックを受けた」という人も少なくなかったようでした。昔も今もそんなには変わってないのかもしれませんね。さすがに中古よばわりはされなかったと思うけど。


その後も、響子さんは三鷹さんになびいてみたり、五代くんの顔面に缶詰を投げつけたり、歯型が残るほど噛み付いたりと狼藉の限りを尽くしますが、ストーリーの面白さやしっとりした情感の描写によって高い人気を獲得し、現在では名作として読み継がれています。



かんなぎ』の武梨えり先生も、体調が回復されたらめげずに連載を再開して、いい作品にしていただきたいものです。


先月号しか読んだことないけど。

*1:連載されていた「ビッグコミックスピリッツ」は、当時は月刊誌であった