駅馬車
日本維新の会の橋下徹・石原慎太郎両代表が「従軍慰安婦は必要だった」「軍隊に売春はつきもの」などと発言し、大きな波紋を呼んでいます。
まぁ、安倍晋三内閣が切り捨てようとしている自称愛国者たちの支持を取り付けるために、わざと過激なことを言ってるんでしょうけど、「沖縄の米軍には風俗を活用してもらいたい」という発言はさすがにアメリカでも取り上げられ、厳しく批判されています。アメリカでは、公職にある人物が売買春を肯定するようなことは考えられないので、この反応も当然でしょう。北方謙三先生はあくまで芸術家であって政治家ではありません。
橋下代表は、その後もツイッターで「風俗嬢は貧困のためじゃなく好きでやっている」「風俗嬢を差別するな」などと連投しています。この人はもともと遊郭(飛田新地料理組合)の顧問弁護士もやっていたので、その筋には強いと自負しているのかもしれませんが、どう考えても無理がありますねえ。そういえば、橋下の天敵である佐野眞一には『東電OL殺人事件』という著書があったのを思い出します。
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とくに、今回の橋下代表および彼を擁護する人たちの発言からは、「性産業に従事しているような女は、好き好んで見知らぬ男に身を任せるふしだらな奴らだから、せめて、獣のごとき兵士たちから貞女たちを守るための犠牲になれ」みたいなニュアンスをどうしても感じるんですよねぇ。彼女たちの人権を尊重する姿勢はまったく見られない。
んで。
このような背景があって、にわかに、美輪明宏のこの歌が注目されています。
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これは日本に限った話ではなく、モーパッサンの『脂肪の塊』では、普仏戦争におけるエピソードとして、セックスワーカーに犠牲を強いる人々の姿が描かれています。
- 作者: ギー・ド・モーパッサン,Guy De Maupassant,高山鉄男
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プロシア軍に占領された町から脱出しようとする馬車があった。乗客はブルジョア夫婦2組、伯爵夫妻、民主主義者、尼僧2名、そしてブール・ド・シュイフ(脂肪の塊)とあだ名されるふくよかな娼婦の10人。フランス社会の縮図のごとき様相である。
娼婦は他の乗客から冷淡な視線を向けられるが、皆が空腹を覚えたときに彼女が食事を分け与えたことで、態度は一変した。
馬車はある村でプロシア軍士官に足止めされる。ブール・ド・シュイフが敵国の士官と寝ることを拒んだためだ。
乗客たちは、初めのうちこそブール・ド・シュイフに同情するものの、しだいに憤りを彼女に向け、士官と寝るように説得をはじめる。
彼女がついに折れて士官と寝たため、彼らは出発を許された。しかし彼らは、自分たちのために犠牲になったブール・ド・シュイフを、汚らわしいとばかりに無視する。民主主義者が国家を口ずさむ中、娼婦はすすり泣くのであった。
これは19世紀後半のフランスの話ですが、20世紀を経て、現在の日本でも、その構造は変わっていないと思いますね。
なお、『脂肪の塊』はジョン・フォード監督の西部劇『駅馬車』にも大きな影響を与えています。
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