ヱヴァQ観賞:歪みねえマダオ

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を観てきたッス。

※以下ネタバレ


本拠地、宇宙戦艦ヴンダーで迎えた使徒
先発葛城大佐が完全無視、赤木博士も理解を見せず完全孤立だった
ブリッジに響くクルーの舌打ち、どこからか聞こえる「もう何もしないで」の声
無言で帰り始めるクルー達の中、初号機のパイロット碇シンジは独りベンチで泣いていた
前作『破』で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の『Q』で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」シンジは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、シンジははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってピアノの練習をしなくちゃな」シンジは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、シンジはふと気付いた


「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出したシンジが目にしたのは、劇場最前列まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどにパンフが振られ、地鳴りのように”残酷な天使のテーゼ”が響いていた
どういうことか分からずに呆然とするシンジの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「バカシンジ、シンクロ練習よ、早く行くわよ」声の方に振り返ったシンジは目を疑った
「ア・・・アスカ?」  「なんだ碇シンジ君、居眠りでもしてたのかい?」
「カ・・・カヲル君?」  「なんだシンジ、かってにホモに走りやがって」
「父さん・・・」  シンジは半分パニックになりながらネルフ本部を見回した
零号機:綾波レイ  初号機:碇シンジ  弐号機:式波・アスカ・ラングレー  仮設五号機:真希波・マリ・イラストリアス  六号機:渚カヲル  作戦指揮官:葛城ミサト  指揮官補佐:赤木リツコ  総司令官:碇ゲンドウ
暫時、唖然としていたシンジだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
赤木博士からプラグスーツを受け取り、エントリープラグへ全力疾走するシンジ、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・


翌日、ベンチで冷たくなっているシンジが発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った

※参考:http://wikiwiki.jp/jivejupiter/?%C6%E2%C0%EE%A5%B3%A5%D4%A5%DA

そんな映画です。


新劇場版『序』『破』で旧来のウジウジしたイメージを払拭したシンジ君でしたが、今回はいきなり14年のコールドスリープから目覚めた浦島太郎状態で登板。その間に地球はサードインパクトで崩壊し、ミサトさんたちはネルフを脱退して反ネルフ組織ヴィーレを立ち上げます。エゥーゴみたいなもんだと思います。ネルフマダオとテムの2人になりました。本当にこの2人しかいないので、あの基地をどうやって運営しているのか、そもそも誰がエヴァを作っているのかわかりません。シンジ君がマダオと対面したときのピンスポはテムが操作してるんでしょうか。というか、世界の人類がほとんど滅亡しているのに、ネルフの旧メンバーだけは揃って生存しているのも謎です。ヴィーレのほうにしても、経済社会が消滅しているというのに、あんな巨大宇宙戦艦を建造するリソースはどこから出したんでしょうか。その辺の疑問は、オレの中の松田さんが「いんだよ細けえことは」と囁くので突っ込むのはやめにします。
唐突に大塚明夫がクルーに加わり、戦闘BGMは『ふしぎの海のナディア』から流用しているあたりはファンの懐古趣味をくすぐろうとしています。

でもクルーの顔ぶれや戦艦のデザインを見ると、どっちかというと『エウレカセブン』に近いものがあります。
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サードインパクトを起こしてしまったシンジ君は、ホモの人の「世界をやり直せるかも」という甘言に乗せられて、マダオの命じるままにエヴァ13号機(2人乗り)の搭乗し、セントラルドグマへ降下します。そこには例によってリリスに2本の槍が刺さっています。サードインパクトでこいつはどうなったのか、よくわかりません。んで、カヲル君は「ロンギヌスの槍とカシウスの槍、2本あるはずなのにどちらも同じだ。これはヤバいよ」と直感するのに、シンジ君は「とにかく槍抜けばいいんだろ」と耳を貸しません。お前も少しは人の話を聞けよ!


んでシンジ君が槍を抜いたおかげでフォースインパクトが発生しかけるんですが、カヲル君の自己犠牲とヴィーレ軍団の攻撃によって未然に防がれます。といっても、すでにサードインパクトで崩壊した世界にまたフォースインパクトを起こす意味がわかりません。ていうかマダオとゼーレはこの期に及んでまだ人類補完計画がどうとか言ってます。まだ補完されてなかったのかよ! しかもマダオはまだ嫁に会えてません。誰の計画も遂行されてない!


というわけで、無人の荒野をゆくシンジ・アスカ・綾波の姿を映して「つづく」。次回は、弐号機と八号機をニコイチにしたエヴァが大暴れする予告編を流して『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』とのこと。何か仕掛けてくるだろうとは思ってましたが、こうもやられるとはね。旧劇場版のギスギスした人間関係が戻ってきた感じです。アスカがシンジ君にふっとばされて(お互いにエヴァに乗っての話です)「女に手を上げるなんてサイテー」とか言うあたりは完全にあのアスカが帰ってきたと確信させられます。ネルフに帰還したシンジ君が、綾波がまた入れ替わったことを悟って絶望し、ふらふら歩く場面なんかはまた画面が実写になるんじゃないかと思ったぐらいです。


ネルフのマークが旧版になっていること、サードインパクトの扱いが『破』のラストと矛盾すること、アスカの眼帯や身体損傷が旧劇場版を踏襲していることなどから、『Q』は『破』の続きではなく、時系列は旧劇場版→『Q』→『序』→『破』となっているのではないか、という考察もあるようです。

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まぁこうやってあれこれ考察している時点で、庵野秀明の掌に乗せられているってことなんですけどね。どうせいくら考察したって真実には到達しないんですよ。庵野さんは絶対そんなこと考えてないに決まってるんだから。


今回、新たに出てきた設定として「エヴァパイロットは歳を取らない」ことが明かされます。14年経っても「エヴァの呪縛」でそのままのアスカやマリの姿は、旧劇場版からずっと観てる古参おたくを揶揄してるようにも受け取れますね。そういえば旧劇場版が公開されてから今年でちょうど14年だし。『序』『破』で正統派のエンターテインメントに大きく舵を取った作風が、旧劇場版に近いニューロティック路線に戻ったのは意味深です。


これはまったくの想像ですが、もしかして庵野さん、奥さんとうまくいってないんじゃないですかね。

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新劇場版での作風の変化が、庵野監督の結婚による心境の変化とシンクロしていることはよく指摘されるところです。また、安野モヨコという人物が投影されているとよく言われる真希波・マリ・イラストリアスが今回あまり活躍していない(ストーリーにはほぼ影響せず、アスカのサポートをするだけ)のも、その疑いを強調することになりますね。


あと見どころはマダオの眼鏡ね。今回から、ゼーレのキール議長がつけていたようなゴーグル(もしかして議長からもらったのかもしれん)に変わりましたが、今にもオプティックブラストをぶっ放しそうでしたね。

「真夏の夜の淫夢」や「ガチムチパンツレスリング」に続いて、最近は「サイクロップス先輩」ってのが流行ってるらしいですよ! 検索してみてね!


全体を通してみて、まあ確実に言えることは「パチンコメーカー大困惑!」ですよ。

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エヴァンゲリオン』という作品の市場展開において、最も重要ともいえるのがパチンコです。フィールズのグループ会社であるビスティから発売され、第一弾「CR新世紀エヴァンゲリオン」から現行の「CRヱヴァンゲリヲン7」まで7機種も出ているこのブランドは、独特の確変システムや多彩な演出により大ヒットし、アニメとのタイアップ台が大量に生まれるきっかけを作った、パチンコ中興の祖といっても過言ではないものです。
新劇場版が制作されたのも、パチンコによる新規ファンの獲得と、資金の調達があってのことです。「CRヱヴァンゲリヲン7」なんかは、『新劇場版:破』の内容を演出に大幅に取り入れており、特殊リーチ「ビーストモード」(これが派手な演出の割に寒いんだ……)、特殊大当たり「ビーストバトル」など、マリの存在感がより大きくなっていました。
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それが、今回の『Q』は日常ステージが存在しない世界観で、シンジ君は活躍せず、ミサトさんもリツコさんも味方じゃありません。これでパチンコを作れと言われても、今までの素材はいっさい使えないわけですから、フィールズの人たちは困るでしょう。パチンコを意識したらしい場面としては、アスカの「コード、スリーセブン」というセリフはあったけど、これじゃ777確定の全回転リーチぐらいでしか使えないし。回転ごとに主人公の悪口を言うような不愉快な台じゃ、誰も打たないよ!