ブルークリスマス

毎年この時期になると、終戦記念日もののドラマとか特番とか映画とかがテレビ放送されます。今年は、倉本聰脚本:ビートたけし主演の『歸國』。


http://www.tbs.co.jp/kikoku2010/
65年前の英霊が現代の日本にやってきて、その繁栄ぶりと裏腹の心の貧しさを目の当たりにする、というまぁいつものテンプレート通りのドラマですね。


こういう、大東亜戦争時代の軍人が現代の日本を憂うというテンプレートはよくあって、少年マガジンで連載された加瀬あつしの『ゼロセン』なんて漫画もありました。

ゼロセン(7) (講談社コミックス)

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あんまり人気は出なかったみたいですけどね。実在の人物に酷似した悪役を出して訴えられるという、『私立極道高校』や『マーダーライセンス牙』パターンを踏襲した末に打ち切られたようです。


ところで、このテの「靖国神社もの」って本当によくありますけど。

靖國神社・奉納野外劇 俺は、君のためにこそ死ににいく [DVD]

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南方や大陸で戦死した軍人が、英霊となって帰国して、仲間と再会するというパターンはよくありますが、靖国には戊辰戦争西南戦争、日清日露の戦没者も祀られているわけでしょ。そういう先達と会う、っていう話はないんですかね。


戦死した兵士が、戦場がいかに苦しかったか現代人に語るお話はよくありますが、先輩の英霊から「われわれ官軍なんて刀と先込め式のミニエー銃で賊軍と戦ってたんだぞ」「旅順攻略戦の地獄に比べれば飛行機での特攻なんてラクなもんだ」とか言われたらグウの音も出ないと思いますけどね。いや戦死にどっちが苦しいとか楽だとかないんですけど、少なくとも、後から生まれた人の方が多少なりとも豊かな生活を味わってから死んでいるわけで、貧しかった時代の人は豊かな時代の人に説教できるというリクツからいえば、昭和の娯楽を経験した世代なんて天国みたいなもんじゃないですか。


靖国神社に祀られていない、戊辰戦争の反新政府軍の戦死者とか、西南戦争の西郷軍の戦死者が現世に帰ってくるお話ってのは作れないもんでしょうか。そんで、神田明神に合祀されている平将門と、白峯神宮崇徳上皇を大将にして靖国神社に戦いを挑むの。


とか与太話を考えながら、ドラマをチラ見してたんですが、ラストで小池栄子が「お兄ちゃん、ありがとう」と言うところは本気で怖くなりました。


自分を捨てた息子を殺してくれてありがとう、ってセリフはそうそう書けるもんじゃないですよ。倉本聰ってこんな人だったっけ……?