競馬の終わり

エンターテインメント作家ファイル108 国内編

エンターテインメント作家ファイル108 国内編

本日は、仙台文学館で「小説家・ライター講座」を受けてまいりました。講師は、評論家の北上次郎先生です。今回も勉強になりました。


文章を書くときは、まず「自分の文章を、他人は集中して読んでくれない」ことを前提にしないといけません。


冒頭に、読ませるためのフックを持ってきて、くどくどした説明文を出来るだけ省かないと、最後まで読んではもらえないんですね。


これは文学賞の応募作もそうで、最初の1枚にポイントがないと、その後にどんな面白い展開があっても、そもそも読んでもらえません。新人賞の下読みは一人で何本も読むものなので、ぜんぶ最後まで読んでたら仕事にならないんですね。


だからといって、最初の部分に情報量をやたら詰め込むのもご法度です。


ヘタな作家は、人物を登場させるとすぐにフルネーム・年齢・職業を提示してしまいますが、読者はそんな情報でその人物を理解できるわけではありません。その人の行動や思考を描いていくことで、はじめて読者はその人物を理解していくのですが、設定を見せたことで、読者に何ごとかを理解させたような偽の安心感を持ってしまうんですね。


昨今はネット上でも匿名だ実名だといろいろかまびすしいですが、名前がわかったからといってその人の何ごとかを理解できるわけではありません。気をつけましょう。

北上先生のオススメ作品

リテイク・シックスティーン

リテイク・シックスティーン

豊島ミホはこの作品を最後に休業するそうですが、これまでの試行錯誤がここでついに実を結んだとのこと。新しい試みを忘れない作家は、いつか必ずブレイクします(という、北上先生の信念)。

  • 杉山俊彦『競馬の終わり』

競馬の終わり

競馬の終わり

第10回日本SF新人賞受賞作品。ロシアの植民地になった22世紀初頭の日本(首都は新潟)を舞台にしていますが、その日本の社会についてはほとんど触れず、ひたすら競馬のことばかり書いているという思い切りに好感が持てたそうです。