夜は200の目を持つ

何日もほとんど書いてなかったのに、いきなりこんな話題で恐縮です。今日はAVの話なので、よいことよいおとなはここで引き返してくださいまし。











はてな匿名ダイアリーで話題になっている、このエントリ。


初恋の人で童貞切ってきたが死にたい 初恋の人で童貞切ってきたが死にたい


初恋の女性「魔女先輩」がAV女優になっていたことを知った男が、中学時代の彼女の思い出を語り、そして男優の公募に申し込んで彼女と絡むことになった、というお話であります。


トラックバックやブックマークを見ると「名文」「増田文学」などとずいぶん絶賛されてますが、ちょっとAVにくわしい人間が読むと、粗が目立って仕方ないです。これを書いた人は、あんまりAVに興味ないんでしょうね。たぶん、実際のAVをそんなに観てない、現場のことにそんなに興味ない人が書いたんでしょう。



まず、「魔女先輩」がデビューしたのは9年も前で、いまでも現役の売れっ子という設定なんですけど、AV女優の寿命はあまり長くありません。そんなに長く活動できる女優はごく少数です。9年前、2006年〜2007年頃にデビューしたAV女優といったら、浜崎りおとか小坂めぐるとか範田紗々とか真田春香とか灘坂舞とか、その辺ですよ(巨乳ばかりなのは単にオレの趣味です)。この名前でピンとくる人は、はてなでは少数派だろうけど。10年ぐらいずっと一線で活躍している女優といったら、かすみ果穂とか佐山愛とか、あとつぼみとか、それぐらいの人気者しかいません。で、いざ絡むとなったら「手首にリストカットの跡があった」と書いてありますけど、そんな精神的に不安定な人が、10年もこの業界で活躍できますかね?


主人公の「俺」が出演する流れも不自然で、こういう企画では必ず、性病に感染していないことを証明する診断書を提出しなくちゃいけないんですけど、その描写はありません。「汁男優」が女優と直接セックスしているのも不自然だし、後半になって実際に知らない世界を書かなければいけなくなるにつれ、描写が雑になっていくのがわかります。


前半のほうでもまだツッコミどころはあります。「ネットで動画を漁ったのは初日だけで、翌日からはDVDを買い揃えた。デビュー作から順々に」とありますが、9年前のDVDを買いそろえるのってけっこうたいへんです。音楽や映画のように、旧作がずっと売れる業界ではないんですよね。オレが鈴木涼美のカミングアウトに際して旧作を買い漁ったときも、中古屋に足しげく通って、ずいぶん苦労したものです。

(以前はオレ好みの丸顔だったが、最近は顔の形が変わるレベルで痩せていて、ブログなどの写真を見るととても怖い鈴木氏である)


そして、彼女の出演作がどんどんハードになっていく過程については、「潮ふき。初アナル。出血。許可無し中だし。浣腸。乱交。SM。全身ぶっかけ。100人斬り。最新作は喪服の未亡人モノだった」と書いてあります。


ここで一番ひっかかるキーワードは「100人斬り」ですね。

南京大虐殺と「百人斬り競争」の全貌

南京大虐殺と「百人斬り競争」の全貌

(こっちの百人斬りは関係ない)



アダルトビデオには、1人の女優が100人の男を相手にする作品が、実際に存在しております。


しかし、男優を100人も揃えるというのはたいへんに大がかりな準備が必要で、予算もかかります。仮に全員がノーギャラの志願者だったとしても、100人が集合できる場所を用意するだけで相当なお金も必要になるでしょう。なので、そんなビデオはあまり多くは作られておりません。作られるとしたら、AV業界のアカデミー賞ともいうべき「AV OPEN」に出展されるレベルの大作ぐらいです。


たとえば、このジャンルで有名なのは、引退を表明した人気ナンバーワンの上原亜衣が主演した「100人×中出し」です。

100人×中出し 上原亜衣 本中 【AVOPEN2014】 [DVD]

100人×中出し 上原亜衣 本中 【AVOPEN2014】 [DVD]

これは、メーカー「本中」の募集に応募してきた100人の上原亜衣ファンを、87人の「孕ませ隊」と13人の「守り隊」に分けて、「孕ませ隊」は逃げる上原亜衣にボールを当てれば即セックスでき、「守り隊」はそうさせないよう守るという、いわばAV版「逃走中」みたいなゲーム性の強いビデオです。この大作は上原亜衣の頑張りもあって好評を博し、2014年の「AV OPEN」でヘビー級(製作費によりスーパーヘビー級、ヘビー級、ミドル級に分けられている)1位を獲得いたしました。翌年には続篇の「100人×中出し2015 絶対に濡れてはイケない孕ませ学校」という、ダウンタウンの「笑ってはいけない」シリーズを意識したバラエティ色の強いビデオも制作されました。



このようなバラエティ色の強いものだけではなく、純粋に「100人斬り」を謳ったものもあります。アイデアポケットというメーカーが「100人斬り」シリーズを作っており、2013年から2015年にかけて、藤崎エリナ、春原未来、桜井あゆ、卯水咲流、玉城マイ、浅野えみという6人の人気女優がこの偉業を達成しています。なお、いずれも年齢やキャリアなど、「魔女先輩」の設定には合致いたしません。

(春原さんはこういう過酷な仕事でも笑顔でやってのける)


というわけで、冒頭で紹介したエントリに書かれている、“「100人斬り」のビデオに出演した、キャリア9年で公称27歳ぐらいの女優”は、オレのサーチ力をもってしても特定することができませんでした。



まぁ、匿名で書かれた妄想的なエントリにいちいちツッコミを入れるのも野暮ではありますが、はてなではほかのジャンルだったら厳しいツッコミが入るところなのに、AVとかエロ関係ではみんな事実認定が極端に甘くなる傾向があるので、野暮を承知でツッコミを入れさせていただきました。



あと、100人AVをネタにした漫画では、高遠るいの『はぐれアイドル地獄変』が面白いよ!