言うとったるがのう、アキバにヤクザは二つもいりゃあせんのじゃぁ!

秋葉原には2回ぐらいしか足を踏み入れたことのないワスですが、首都圏に在住するオタのお歴々からすると、聖地として思い入れのある土地のようですね。
んでホラ、オタクの人って、自分たちのジャンルがいかに綺麗でクリーンかアピールしたがるじゃないですか。ドラッグカルチャーの否定とか、犯罪者の切断処理とかね。
その流れの一環か、「秋葉原にヤクザはいない」っていう人がいたんですよ。


秋葉原にヤ●ザが居ない理由 - Togetterまとめ 秋葉原にヤ●ザが居ない理由 - Togetterまとめ



なんだかやたら思わせぶりな書き方で、「秋葉原には露天商のまとめ役がいたから、ヤクザは手を出せなかった」みたいなことを書いてるんですけど、露天商のまとめ役がヤクザの親分じゃなくて何なんだと。


どうも最近、テキヤはヤクザじゃない、と思ってる人が多いんじゃないかと。


日本におけるヤクザは、その由来から賭場をとりしきる博徒、露天商をまとめるテキヤ、どちらにも属さない愚連隊の三つに大別されます。
博徒テキヤは江戸時代以前からの伝統がありますが、愚連隊は戦後の混乱期に、復員軍人や不良学生が反社会的行為に手を染めて生まれた勢力です。
それぞれのカテゴリを代表する人物としては、博徒なら清水次郎長テキヤなら車寅次郎、愚連隊なら安藤昇が挙げられるでしょうか。1人は架空の人物ですけど。

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寅さんは抗争や殺人に関わることはありませんが、テキヤの抗争を描いた作品としては、鈴木則文監督の『関東テキヤ一家』が有名です。
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んで、博徒テキヤは発祥は違いますが、近代になるとそんなことも言っていられなくなります。そもそも、日本最大の暴力団である山口組は港湾事業と芸能興行をメインにしていたし、テキヤだから、博徒だから、という区別はそれほど意味をなさなくなりました。葬祭や襲名披露などの儀礼で、神棚に祀る対象がテキヤなら神農、博徒なら天照大神という違いがありますが、これは部外者にはわかりませんからね。

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テキヤ博徒が入り乱れての抗争を描いた作品といえば、『仁義なき戦い・広島死闘篇』を思い浮かべる人が多いと思います。

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この映画は、昭和21年に広島市で勃発した、博徒の岡組と、テキヤの村上組による抗争をモデルにしています。
映画では村岡組と大友組という名前に変えられ、大友組の組長(加藤嘉)の息子、大友勝利(千葉真一)が主人公格のひとりとなっています。
彼はテキヤの息子でありながら、自ら愚連隊を率いて旧来のしきたりを破壊する、戦後の混乱期を象徴する人物であり、映画史に残る名台詞を発しています。

広島に新設された競輪場の利権をめぐって、村岡組と大友組は苛烈な抗争を展開していました。
この抗争について、大友組長は

競輪は博奕じゃけん、博奕打ちのテラじゃろが。神農道の稼業人が手をつけては仁義が立たん言うちょるんど!


といさめるのですが、我らが千葉ちゃんは豪快に笑い飛ばしてから、

なーにが博奕打ちなら! 村岡が持っちょるホテルは何を売っちょるの。淫売じゃないの。言うならアレらぁ、オメコの汁でメシ食うとるんど。
のう親父さん、神農じゃろうと博奕打ちじゃろうとよ、わしらうまいもん食ってよ、マブいスケ抱くために生まれてきとるんじゃないの。それも銭がなけりゃ何もできゃぁせんので。ほうじゃけん、銭に体張ろういうんが、どこが悪いの!? おう!

言うとったるがのう、広島にヤクザは二つもいりゃあせんのじゃぁ!


このように、神農も博徒も関係なく、アキバの人間はうまい缶入りおでんを食って、マブい抱き枕を抱くために来ておるわけですから、無理にクリーンぶる必要はないんじゃないかと思いますね。

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