狼よ落日を斬れ

映画を観る最大の楽しみといえば、人が虫けらのように死んでいくところだというのは大方の意見が一致するところだと思いますが、その観点からいった貢献度のランキングが発表されました。



映画史上最も人を殺した俳優トップ25 日本の意外な俳優もランクイン : 映画ニュース - 映画.com 映画史上最も人を殺した俳優トップ25 日本の意外な俳優もランクイン : 映画ニュース - 映画.com
ミシガン州立大学でコンピュータを研究しているオルソンさんという人が作ったランキングです。

1.アーノルド・シュワルツェネッガー(369)
2.チョウ・ユンファ(295)
3.シルベスター・スタローン(267)
4.ドルフ・ラングレン(239)
5.若山富三郎226
6.クリント・イーストウッド(207)
7.ニコラス・ケイジ(204)
8.ジェット・リー(201)
9.クライブ・オーウェン(194)
10.ウェズリー・スナイプス(193)
11.ジェイソン・ステイサム(182)
12.クリスチャン・ベール(161)
13.ウィル・スミス(158)
14.ブルース・ウィリス(157)
15.レイ・スティーブンソン(149)
16.メル・ギブソン(148)
17.スティーブン・セガール(146)
18.三船敏郎(134)
19.チャーリー・シーン(131)
20.マーク・ウォールバーグ(125)
21.アントニオ・バンデラス(122)
22.フランコ・ネロ(115)
23.チャールズ・ブロンソン(113)
24.ジェームズ・コバーン(106)
25.マイケル・クラーク・ダンカン(105)

まぁだいたい納得できるランキングではありますが、全ての映画をチェックして数えることなんてどだい無理な話ですから、母数がどれだけあるのかも明記してほしいですね。リンク先本文によれば「1960年以前の作品やB級映画などは集計されていないものが多い」とのことですので、例えば「1960年から2014年までの映画○○本を見てカウントした」とか明らかにしてもらうと、より傾向が分析しやすくなると思います。カウントされてない映画もいっぱいあるだろうし。あと、ストーリー上で殺した人数と画面で描かれた人数が違うこともある。たとえば『八つ墓村』の山崎努は、ストーリー上では32人を殺していますが、出てくるシーンは14人分しかないし。

あの頃映画 松竹DVDコレクション 「八つ墓村」

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んで、日本人1位となった若山富三郎は『子連れ狼』シリーズでボディ・カウントを多く稼いでいます。このシリーズは、ロジャー・コーマンが買い付けて『ショーグン・アサシン』の題名でアメリカでも公開され、タランティーノウェス・クレイヴンにも影響を与えていますので、日本人が考えるよりアメリカで有名なんですね。

1本の映画の中で一番多くの人を殺しているのは、このシリーズ最終作『地獄へ行くぞ! 大五郎』とのこと。


しかし、このシリーズは大ヒットしたものの、今では萬屋錦之介が拝一刀を演じたテレビドラマ版の印象が強く(大五郎役の西川和孝が見せた転落人生の凄まじさもあって)、映画のほうは忘れられつつあるのが寂しいですね。ブクマでも「知らない」という人が多いし。でも当時はすごく人気があったんですよ。


池波正太郎の『仕掛人・藤枝梅安講談社文庫版の解説では、小林久三が松竹の宣伝マンだったころ、池波の「その男」を映画化したときの思い出を書いています。

ここで小林久三は、「当時は安手の劇画を原作とした血なまぐさい時代劇映画が人気だった」などと非常に苦々しく述懐しており、明らかに、東宝の『子連れ狼』人気を意識していたことがわかります。


池波正太郎も、『子連れ狼』のことが頭にあったのか「血なまぐさい映画になるのは困るよ」と言っていたのですが、できあがった映画は子連れ狼』と同じ三隅研次監督だったので、人体真っ二つなど残酷描写が盛り込まれ、タイトルも『狼よ落日を斬れ』という明らかに『子連れ狼』を意識したものに変えられていたのでありました。池波正太郎は激怒しますが、小林久三の説得により「わかった小林、君も社員だからな」と折れたそうです。このセリフも含めて味わい深い。

その男 1 (文春文庫 い 4-23)

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あの頃映画 「狼よ落日を斬れ 風雲篇・激情篇・怒涛篇」 [DVD]

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