復興へ向けて 〜名取市ゆりあげ港朝市〜

宮城県名取市にある閖上漁港では、毎週日曜日になると朝市が立ち、海産物や野菜などが露天販売されて早朝からたいへん賑わっていたのですが、東日本大震災津波で会場は跡形もなく流されてしまいました。


http://www.kankou.natori.miyagi.jp/asaiti/shoukai/
(↑在りし日の情景はこちら)


もう再開は不可能と思われていましたが、震災から三週間足らずの3月27日には、会場を移しての復活イベントが開催されています。まさに不屈の闘志です。


http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/cooking/20110329-OYT8T00385.htm

閖上の朝市復活、魚や野菜格安販売…宮城・名取市

「街再建の決意」

 江戸時代以前から漁港として栄え、東日本巨大地震で大きな被害を受けた宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区で、毎週日曜と祝日に開かれていた朝市が27日、復活した。

 午前6時から、塩サンマやイカ、野菜などが販売されたほか、うどんなど約6000食分が振る舞われた。企画したゆりあげ港朝市協同組合の桜井広行代表理事は「必ず街を再建するという決意を示すとともに、復興のシンボルにしたい」と意気込んでいる。

 閖上地区は、伊達政宗が掘らせたとされる日本最長の運河が残り、江戸時代に運河を使って仙台城下に海産物を運んだという歴史を持つ。約30年前から朝市が開かれ、通常約5000〜1万人の観光客らが集まる。

 桜井理事の自宅や水産物加工工場も津波にのまれ、現在は妹の家に家族と身を寄せる。市内の小学校に物資を運んだ際、避難者が昼はパン1つ、夜はおにぎり1つしか食べていない光景を見て、「これでは元気が出ない」と心を痛めた。組合員を中心に協力を募り、震災から約2週間で開催を決めた。

 朝市は、同市内の大型商業施設の駐車場を会場に、魚介類や野菜のほか、豆腐や卵が並び、格安で販売された。市民会館に避難し、朝市に訪れた同市閖上、小畑晋吉さん(75)は「被災後、新鮮な食べ物を口にしていなかった。生き返るようです」と話す。「家の中は泥でめちゃくちゃで、田にもがれきの山ができている。でも必ず元の姿に戻します」と気持ちを新たにしていた。

 桜井理事は「今後も続けていけるかは分からないが、地区の人たちに腹ごしらえをしてもらい、前向きな気持ちを持ってもらいたいと思った。閖上の朝市は、地震にも津波にも絶対に負けません」と力強く話した。

(2011年3月29日 読売新聞)


んで、きょう4月10日には復活第二弾イベントが開催されたので、行ってきました。


http://www.kankou.natori.miyagi.jp/asaiti/event/


会場は、イオンモール名取エアリ西側駐車場。先日、深町秋生先生と訪れたとき*1にはまだほんの一部だけの営業で人影もまばらだったこの巨大ショッピングモールですが、今は2フロアで営業できるまでに復旧しており(それでも全体の3分の1以下だけど)、商品も豊富で、多くの買い物客で賑わっています。


その店舗からちょっと離れた駐車場が、今回のイベント会場。





広いスペースにたくさんのテントが立ち、野菜やお菓子、日用品などを販売しています。



綿菓子やたこ焼き、大判焼き(関東でいう「今川焼き」、関西でいう「回転焼き」)など縁日ふうの屋台も出ています。

綿菓子のパッケージは、アニメの流行よりやや遅めです。プリキュアは『ハートキャッチ』でした。

「復興支援価格」として、パッケージ入りは400円、パッケージなしなら100円という価格設定は版権ビジネスというものの厳しさを実感させられます。


ホットコーヒーや油揚げを売っているブースでは、

売り上げを小学校の新一年生のために使う、という掲示がありました。子どもたちへのケアは大人の義務ですね。

子どものための、無料くじびきブースもありました。

景品はバルーンおもちゃ数種類で、会場で見かけた子どもたちの多くが、ここで引き当てた風船を持って歩いていました。

大人にもケアが必要だということでしょうか、カイロプラクティックのブースもありますが、こちらはそれほど混んでいません。みんなまずは買い物がしたいのでしょう。


被災した人のために、衣類を無料で配布するブースもあります。

空になった段ボールにはこんな励ましのメッセージも。ディズニーさんもやなせさんもこれぐらいは堪忍してくれると思います。



今朝は餅つきや自衛隊音楽隊による演奏もあったのですが、会場についたのが10時とやや出遅れたため、それらのイベントは見ることができませんでした。帰っていく自衛隊のみなさん。子どもたちと記念撮影なんかもしていましたが、ピースボートあたりの人たちが妨害するような様子はまったくありません。


会場のすみに、ひときわ長い行列を発見。震災直後にはどこのスーパーにも商店にも長蛇の列ができていましたが、ひと月もたってこの行列は珍しいです。

その先を見てみると…



震災前から人気の、水餃子(でっかいのが5個で300円)でした。

セルフサービスでキムチ(白菜と大根の二種類)をトッピングして食べるのがこの店の流儀。この写真だとあんまりおいしそうに見えませんが、大陸ふうに皮が厚くもちもちした、食べ応えのあるおいしい餃子です。

6個500円のシウマイもあります。こちらは皮がきわめて薄く、ほぼ肉団子に近い代物でしたがそれはそれでなかなか美味。井之頭五郎ならずとも満足でありましょう。



義援金を募る美少女グループ。女性にめっぽう弱いぼくが素通りできるはずもなく、思わずコインを投入したところ、お礼としてヘーゼルナッツ入りのビスケットをもらいました。赤字じゃないのかそれ。



名取市にはパナソニックの工場があるのですが、そこからも生活支援物資を放出しております。


紙おむつや衣類(一着100円均一)を売っているのですが、

支援物資の出どころを見ると「松下政経塾」とあってちょっと意外。スタッフももしかすると社員じゃなく塾生なのかもしれません。



会場の真ん中には「再会広場」というブースがあり、避難所生活で疎遠になっていた人たちが旧交を温めるのに利用してもらおうという目的だったのでしょうが、今日は晴天で暖かかったため、オープンカフェのように使われていました。



愛犬を連れて来場している人も多く見られます。


「再会広場」のすぐ近くには、ひときわ混み合ったブースがありました。

何があるのか、と近づいてみると……

もともと朝市の会場だった、閖上周辺が津波にさらわれるニュース映像が、エンドレスで流されていました。

今日の会場は楽しげな賑わいに満ちていましたが、未曾有の大災害に見舞われた人々が、復興に向けて健在をアピールするための緊急イベントなのだということを再認識させられます。もしかしたら来場客の中には、自宅が流される映像をここで見ている人がいるのかもしれない。そう思うと胸が痛みます。



震災前は毎週日曜に開催されていたゆりあげ港朝市ですが、今後も月一回ていど、市内や近郊で開催するそうです。近隣の方は、機会があればぜひ一度おいでください。

追記

次回からは毎週開催されるそうです! 早朝6時〜正午ごろまで、お時間のある方はぜひ!