震災から二週間を過ぎて〜仙台から山元町まで〜

昨日、深町秋生先生が仙台に来てくれたので、震災の状況を見ていただきました。こちらのルポにまとまっています。


震災後の仙台を歩く - 深町秋生の序二段日記


映画秘宝持ってきてください」というぼくの厚かましいお願いにも快く応じてくださり、本当にありがとうございます。

映画秘宝 2011年 05月号 [雑誌]

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この日は、まず最初に被害の大きかった区域(とはいっても車でふつうに通れる範囲の話で、沿岸にはもっとひどい被災地が広がっている)から回ってみることにしたのですが、国道45号線が、ぼくの想像よりもひどい状態だったので、案内するこちらの方がショックを受けてしまいました。

仙台市多賀城市の境ちかくにあるこの場所は、2005年の5月、早朝ウォークラリーをしていた仙台育英学園高校の生徒の列に飲酒運転の車が突っ込み、生徒3人が死亡、15人が重軽傷を負ったといういたましい事故の現場でもあります。


http://www.sendaiikuei.ed.jp/i_html/i_522kohan2.html
(公判記録)


この現場はいつ通っても献花の切れていたことがなく、その悲しみは風化されないでいるのですが、この日も、小さな花束がしっかりと供えられていました。大災害という大きな悲劇によっても、かつての悲劇の記憶をかき消してしまわないように。


凄惨な被災地の様子にSAN値をごりごり削られたので、被害の少ない仙台市内までとにかく戻り、以前に紹介した鯛焼きラーメン屋で食事をごちそうになりました。
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20101117


いまはモヤシが品薄状態のため、二郎系に欠かせない「ヤサイ」はキャベツしか乗っていませんでしたが、ぼくは以前から「ラーメンに乗ってるモヤシは正直ジャマくさい」と考えているので、こっちの方がウマいんじゃないかと思います。モヤシってスープの味を薄めるんですよね。


市内の繁華街に行くと、被災地ではみんなジャージやトレーナー姿だったのが、一変してよそ行きの服装になります。震災から数日の間は、スカートをはいた女性を見かけることがほとんどなかったので、これから出勤するのであろう髪を盛ったキャバ嬢の姿を見ると、人心が安定してきたのだなとヘンなところで感心してしまいます。



アーケード街で一軒だけ開いていたパチンコ店では、『創聖のアクエリオン』やアントニオ猪木のPOPを改造して「がんばろう東北」のメッセージを掲げています。


この辺りまでくるとだいぶ心に余裕も出てきて、猪木のPOPから「スリーパーをかけられているのは誰だろう」と考察することもできるようになりました。髪形からいっておそらくは長州力、猪木の老け具合からみて1988年の試合(延髄ラリアットで長州がはじめて猪木をピンフォールした)ではないかという結論に達しました。山形からわざわざ来てくれた人を、こんなどうでもいい話に付き合わせるというのも考えてみれば無礼なことですね。別れ際には、深町先生が最近ハマり始めたという「水曜どうでしょう」のDVDを14枚ぜんぶ押し付けるという暴挙に及んでしまったのも、ガソリンの枯渇によって冷静な判断力を失っていたのだ、と情状酌量していただけたら幸いです。


ちなみに、観る順番は、発売順に

  1. 原付ベトナム縦断1800キロ
  2. サイコロ1/粗大ゴミで家を作ろう/闘痔の旅
  3. サイコロ2 〜西日本完全制覇〜/オーストラリア大陸縦断3,700キロ
  4. サイコロ3 〜自律神経完全破壊〜 前編/後編 完全版
  5. 北海道212市町村カントリーサインの旅/宮崎リゾート満喫の旅/韓国食い道楽サイコロの旅
  6. ジャングル・リベンジ/6年間の事件簿!今語る!あの日!あの時!/プチ復活!思い出のロケ地を訪ねる小さな旅
  7. ヨーロッパ21ヵ国完全制覇
  8. 激闘!西表島
  9. 北海道212市町村カントリーサインの旅II/サイコロ4 〜日本列島完全制覇〜
  10. 東京2泊3日70km/マレーシアジャングル探検
  11. 桜前線捕獲大作戦/十勝二十番勝負/サイコロ5 〜キングオブ深夜バス〜
  12. 香港大観光旅行/門別沖釣りバカ対決/北極圏突入 〜アラスカ半島620マイル〜
  13. 日本全国絵ハガキの旅/シェフ大泉 車内でクリスマスパーティー/東北2泊3日生き地獄ツアー
  14. クイズ!試験に出るどうでしょう/四国八十八ヵ所/釣りバカ対決 氷上わかさぎ釣り対決

これを推奨します。とはいうものの、ぜんぶ観るにはボリュームがありすぎるので、サクっと観たい場合は「車内クリスマスパーティー」がいいでしょう。一週だけのミニ企画で、かついつも以上に力の抜けた内容なのでリラックスに最適です。


というわけで深町先生を見送り、翌日の今日は、山元町で被災した友人宅の片付けを手伝ってきました。こちらはさすがに昨日以上のハードさで、泥と瓦礫の海をくぐってたどり着くだけで一苦労です。何度も遊びに行った家がすっかり泥と瓦礫に飲み込まれていて、言葉を失うほどのショックでした。


一階はすっかり被災していましたが、二階の子ども部屋はほぼ無傷で、疎開先のアパートから久しぶりに帰ってきた子どもたちが嬉しそうに遊んでいたのが、せめてもの救いです。泥の中から、子どもたちの写真が詰まっているはずのハードディスクや、アルバムや、母子手帳やへその緒などをサルベージできたのも。


帰り際には、お礼として彼の秘蔵の書庫から(ほとんどの本がダメになってしまったが、二階に置いてあったごくわずかの本は被害を免れた)中島河太郎の『推理小説辞典』をもらってきたりもしました。


こうして友人の煙羅くん一家と別れたのですが、帰宅途中、うちの近くにガソリンスタンドの行列を見かけると、思いのほか短い上にサクサクと進んでいます。これはもしかしてイケるかも、と、ぐるりと回り道をして行列の最後尾に並びました。


いま、仙台のガソリンスタンドでは、行列の最後尾に「整理券をお持ちのお客様のみ」とか「本日はここまでで完売しました」などの看板を持ったスタッフが立っていることが多いのですが、今日はそんなこともありません。少し進むと、横道からの割り込みを防止するために立っているスタッフがいたので「整理券とか持ってないんですが、大丈夫ですか」と聞いてみたら「大丈夫だ、問題ない」(大意)とのこと。


というわけで、昨日は深町先生を「ガソスタで徹夜ッスよ、仙台マジヤバいッスよ」とさんざん脅したにも関わらず、今日は30分ていど並んだだけでサクっと給油できちゃったのでした。


いや、あの、別に話を盛ったわけじゃないんですよ。前日から車を放置して場所取りしてる人たちがいるのは本当で、早朝から行列ができてあちこちで渋滞しているのも本当なんですが、タイミングに恵まれるとこういうラッキーなこともあるんです。


……本当にすみませんでした。