始まりの福音
安藤健二の『パチンコがアニメだらけになった理由』を読みました。
- 作者: 安藤健二
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2011/01/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『新世紀エヴァンゲリオン』というクセの強いアニメが、どうしてパチンコファンにこれほど受け入れられたのか。ぼくもずっと疑問に思っていたのですが、その理由は『エヴァ』というアニメの性質ではなく、「CRエヴァンゲリオン」に搭載されている「突然確変」という新システムにあった、という分析は興味深かったです。パチンコ「エヴァンゲリオン」は、アニメを知らないパチンコファンによって人気台となり、原作アニメの人気も高まったというんですね。決してアニメのファンがパチンコに流れたわけではなく、制作側も原作ファンを取り込もうとはあまり考えていないようです。
新世紀エヴァンゲリオン?魂の軌?設定6を見抜く!! (双葉社スーパームック パチスロ攻略マガジン)
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2010/08/06
- メディア: ムック
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現在のパチンコは、液晶画面での演出に重きが置かれるようになっており、その素材としてアニメが使われるようになったとのこと。それほどヒットしたわけでもないアニメ(『アクエリオン』とか)がどんどんパチンコ化されるのは、
- キャラクターをイチから作るより、既存の映像作品から素材を引っ張るほうが手っ取り早くて安上がり
- 実写ドラマだと肖像権をクリアするのが大変だが、アニメなら版権が取りやすい
- そもそもアニメを知らない人をターゲットにしているので、原作の知名度はあまり問題にならない
- むしろ、B級アニメのほうがロイヤリティが安く済む
という事情があるようです。
ですが、この現状はパチンコ人気の低下とアニメDVDの売上不振という、それぞれ問題を抱えた業界の共依存ともいうべき構造があり、いずれ破綻するのではないかと著者は結論づけています。さらにその背景には意外な原因があるのですが、くわしくは本書を参照のこと。
こういう結論に達することは、業界の人たちもわかっていたのでしょうか。今回も取材は難航し、ほとんどの台メーカーやアニメ製作会社から取材拒否を受けています。中でもGONZOの対応はすごくて、「掲載するならロイヤリティを発生させてほしい」と言ってきたといいますから、アニメ業界ではジャーナリズムとマーチャンダイジングの区別がついていないようですね。
実に面白い本でしたが、なぜか活字にすごくクセがあって、中国語のサイトを見ているような感じに襲われることもしばしばです。他の人も同じ感想を持っているようですが、こういう細かいトコロが意外と気になるもんなんですねぇ。
あと、パチンコ「エヴァンゲリオン」にハマった人の実例として杉作J太郎が出てくるのですが、これがもういちいちカッ飛んでいて素晴らしい。
僕が監督している映画『チョコレート・デリンジャー』の撮影も、なんとか出来たのは綾波さんのおかげです。お金が払えないからトラブルとかも少々起きて、もう心が折れてたんです、そういう状態の時に下北沢で、一瞬、パチンコに行ったんです。1万円ぐらい負けた後で、綾波さんが登場して『あなたは死なないわ』って言った後に大当たりしたんですよ。パチンコ店で涙が出たのは初めてでした
本書p.14
杉Jは綾波レイのことを「綾波さん」と敬称づけで呼び、金に困ったときにはパチンコ「エヴァンゲリオン」で大当たりを出してはピンチを乗り切った話を熱く語っています。男の墓場プロダクションの面々を「綾波さんの奢り」と称して飲みに連れていったり、地方の上映会でホテル代がなかったとき(劇場からもらえるお金は後払いである)ホテルの隣のパチンコ店で15連チャンして「全部、綾波さんが払ってくれて…」というエピソードは、杉Jの風貌も相まって実に味わい深い。
- 作者: 杉作 J太郎
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2010/12/23
- メディア: 単行本
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- 作者: 貞本 義行
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/08/26
- メディア: 単行本
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