いつかX橋で

昨日の話ですが、仙台文学館で「小説家・ライター講座」を受けてまいりました。


今月の講師は、熊谷達也先生です。

いつかX橋で

いつかX橋で

今回、熊谷先生は「文章を書く上で、最も大きな影響を受けた本はなにか」と受講生全員に質問をしました。


森鴎外の『阿部一族』」とか「夏目漱石の『こころ』」とか「井上靖の『天平の甍』」といった重厚な文学作品を挙げる人が多かったのですが、ぼくだけ江戸川乱歩の『陰獣』です」などと答え、偏差値の低さを露呈してしまいました。

江戸川乱歩の陰獣 [DVD]

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熊谷先生の場合は、「リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』です」とのことでした。

利己的な遺伝子 <増補新装版>

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『邂逅の森』などのマタギ小説を創作するにあたり、「人間と他の生物の間に本質的な違いを認めない」という世界観の根底に、ドーキンスの「生物は遺伝子の乗り物である」という理論があったそうです。


でも、このように明かしてしまうのは作家としての底を見せるようなもので、質問されるのは極めて困る、ともおっしゃってたんですけどね。



ぼくの場合、小説でなくブログを書く上で最も影響を受けた本はというと、澁澤龍彦の一連のエッセイ、とくに『思考の紋章学』ですね。

思考の紋章学 (河出文庫)

思考の紋章学 (河出文庫)

澁澤のエッセイでは、日本の王朝文学について語っていたのがいつの間にかヨーロッパの博物誌になったり、20世紀の映画(ベルイマンとかブニュエルとか)の話題が中国の古典文学につながったりすることがよくあったものですが、実はぼくのブロガー作法もこれに準じているのです。


あちらはジル・ド・レイやらパラケルスス、こちらは『仁義なき戦い』やら『撲殺天使ドクロちゃん』という、持ちネタの次元が違いすぎて誰もわかんないと思いますけどね。